『歴史が教えるマネーの理論』

 飯田泰之准教授の『歴史が教えるマネーの理論』を拝読しました。
 本書は、ヨーロッパや日本の事例を基に「お金って何だろう?」といった疑問や「物価って何だろう?」という疑問答えてくれる一冊です。

歴史が教えるマネーの理論

歴史が教えるマネーの理論

 本書は3部構成となっているのですが、第1部では「貨幣数量説」を概説した上で、WW1後のオートリアが賠償金支払いのために貨幣発行量を増加させ続けていたにも関わらずハイパーインフレーションが終息した事例を用いて、貨幣数量説の限界を指摘し、なぜ動学が発展していったかが端的に説明されています。
 続く第2部では、各国の物価と縁の深い「為替レート」へと話題は移っていきます。ここでは、為替レートがどのように決定されているかについて、素朴な購買力平価説やマネタリー・アプローチなどを紹介したうえで、金本位制や固定相場制についても江戸幕府などの事例を用いての解説がなされます。
 そして締めの第3部においては、物価と切っても切り離せない関係にある「金融政策」に焦点があたっています。中国春秋時代管仲や、江戸時代の各種改革(ex.天保享保...)を例に挙げ、金融政策が物価にどのような影響を及ぼすかを考察されています。
 登場した際には妥当的だった理論が、今ではさほどの説明力をなぜ持たなくなっているのか?という説明はとても納得のできるものでしたし、扱っている内容も江戸時代の改革などで新鮮味のある一冊でした。
 
 経済学に関する著書を読み進め、学者の方々の発信する時論に触れていく過程で、貨幣や物価ってそもそも一体なんなんだろう?という疑問がふつふつと湧いていたのですが、本書を読んでいくうちに目から鱗と称してもいい具合に、疑問が氷解して行きました。貨幣数量説や購買力平価説は聞いたことがあるけど、貨幣や物価についての理解は今一つ足りないなと感じてる方に、かなりオススメ!
 飯田准教授の著者の中では間違いなく白眉。欲をいえば国際金融のトリレンマをもっと整理して解説してくれればよかったかも。